立原正秋「海岸道路」(角川文庫)読後メモ

 積んどく本の山の奥底から引っ張り出して読む。奥付ページを見ると、昭和58年1月に発行された5版であることがわかる。特に古本屋の売り値表示らしきものはないので、1980年代に新刊で買ったのだろうか。そうだとすると、読まないまま40年ぐらい埋もれていたことになる。

 どうしてこの本を買って、そして読まなかったのだろうか。当時好んでいた片岡義男の爽やかな青春物語のように思って買ったら全然違うので、二、三ページ読んで放ったのだろうか。

 ともかく今回読んでみたら、なかなか面白かった。但し、全く「爽やか系」ではない。「無頼系」「退廃系」とでもいうようなものだ。初出は1966年から1967年の「週刊サンケイ」連載だというから、描かれる風俗は相当に古い。現代のコンプライアンス基準に照らせばNGの連続でもある。ポルノ映画の原作になっていないのが不思議なぐらいだ。さすがの角川も文庫版の紙媒体での提供はやめて電子版のみとしているのは、有害図書のレッテルを貼られるのを懸念したからだろうか。

 また主人公は相当な美食家らしく、贅沢な食べ物を過剰に食べている。酒も浴びるほど飲んでいる。どう考えても健康に良くない。作者もそうだったのだろうか。立原は食道癌により54歳で死んでいる。