2024-01-01から1年間の記事一覧
第二次大戦中の東条英機首相暗殺計画については、吉松安弘「東條英機 暗殺の夏」というノンフィクションが詳しい。その暗殺計画や和平に向けた動きを背景に、西村京太郎は時空を越えたミステリーを作り上げた。何しろ、大化の改新の頃の有間皇子(ありまのみ…
生涯の大部分を日本語研究に捧げた学者が選び出した日本文学の片言隻句には、さすがに一生に一度は読んでおきたい珠玉の名文が多い。読む本を探すときの良質なレファレンスともなる。
昔、リベラルっぽい学生の間で、色川大吉は「読むべき本」とされていたように思う。逆に高坂正堯は「読まなくていい本」だったような。今思えば、とても未熟な感性・知力だったとは思うが。 色川は日本近代史の研究者。学徒出陣をした戦中派で、元共産党員。…
人と人とは何とわかりあえないことが多いのだろうか。夫と妻、父と娘、学生時代からの異性の友人。それでも何かのきっかけで、考えたり行動したりすることにより、「わかった!」に近づくことは可能だ。 団塊の世代、企業戦士、相当がんばったが役員にはなれ…
いかにも歴史小説っぽいおどろおどろしい題名とは裏腹に、これは精緻なノンフィクションである。太平洋戦争中の昭和19年(1944年)6月2日から7月23日までの2か月足らずの間、日本の政治を動かす重要人物たちの行動が交錯に交錯を重ねる。 焦点は、戦争継続一…
とりあえず平和な日本にいて、戦乱が続く中東のことはいろいろなニュースに接してもわからないと言ってすましている。それでいいのだろうか。自分に何ができるとも言えないだろうが、少しは真実を知る努力をし、少なくとも自分が生きる時代のこととしてでき…
石野径一郎「ひめゆりの塔」 読むべき本だった。
西村京太郎「十津川警部シリーズ 無人駅と殺人と戦争」(祥伝社文庫)読後メモ
西村京太郎の「十津川警部」モノで、これも太平洋戦争に関係がある。本作は「陸軍刑法」と東條英機の「戦陣訓」との食い違いに焦点を当てたもの。十津川警部の奥さん「直子」さんや、警部の大学時代の恩師、仲間なども登場する。
西村京太郎「知覧と指宿枕崎線の間」(角川文庫)読後メモ
ランキング参加中読書 西村京太郎のトラベルミステリー、「十津川警部」モノの1冊。と言ってしまえばそれまでだが、実はそれだけのものではない。 このエンタメ小説の中で、主人公の十津川警部の言葉や頭の中を借りて、著者は太平洋戦争、天皇制、特攻などに…
35編の仏教説話から成る「今昔物語集 巻三」に現代語訳と注釈が付けられたもの。「巻三」はインド、ネパールにおけるお釈迦様とその弟子たちの話。インド、ネパールの地名も人名も、もちろん全部漢字で書いてある。 日本語教師にとって少しは古文に触れるこ…
結構いい本だと思うが、もう古本でしか買えないようだ。昭和・平成のルポライター佐木隆三が国会図書館やら三重県桑名のお寺といった国内だけでなく、イギリス、カナダにまで飛んで書いた実録モノだ。 題材は、日露戦争の真っただ中、ロンドンから忽然と姿を…
なんとも達者なお爺さんだ。87歳、いやもう今年は88歳になっているだろう。朝2時に起きて日経CNBCで米国市場をチェック、4時に日経朝刊を読み込み、東京の市場時間中は3台のモニターを前にして売ったり買ったりのデイトレード。場が終わってからはすべての取…
最近、古本屋で購入。高校以来苦手科目になってしまった数学に、未だ未練がある。 中世、ルネサンス、近代へと時代が変わっていくあたりのヨーロッパ、数学が錬金術や占星術と一緒くただった時代の事情がかすかな関西弁混じり(東京生まれなのに)で語られる…
これも積んどく本の中から引っ張り出して読んだ。奥付を見ると、発行は2000年(第15刷)とあるから20年以上埋もれていた可能性がある。英語の勉強を兼ねて買ったのだろう。 対訳ではなく「英語文庫」だから、本文は英語で巻末にほんの少しだけ翻訳家の伊佐憲…
積んどく本の山の奥底から引っ張り出して読む。奥付ページを見ると、昭和58年1月に発行された5版であることがわかる。特に古本屋の売り値表示らしきものはないので、1980年代に新刊で買ったのだろうか。そうだとすると、読まないまま40年ぐらい埋もれていた…
2024年5月8日付けの朝日新聞(紙媒体)に「デジタル社会の『命綱』 磁気テープ進化中」と題する記事が載った。デジタル版は2024年5月8日 5時00分: 朝日新聞デジタル(有料記事)だが、内容は2024年4月17日 8時00分: 朝日新聞デジタル(有料記事)の焼き直し…
倒錯した犯罪者の眼、被害者になるかもしれない人妻の眼が交錯する中、ストーリーはどうしようもないデッドエンドへと突き進んでいく。 舞台はニューヨークシティ。時は1980年代。 原題:SURPRISE PARTY 著者:William Katz 訳者:小菅正夫
昔会社員だったころ、営業課長が課員を集めて言った。「おー、みんな今日の外出予定全部キャンセルしてくれ。地下鉄でテロあって、毒ガスまかれて、若いサラリーマン一人死んじゃった。」亡くなった人は一人ではなかった。多くの負傷者も出し大変な事件とな…
遅まきながら、「ゴジラ-1.0」を観た。 終戦直後を舞台設定としたことで、ゴジラ映画に新しいドラマを生み出した。 戦後、ゴジラの物語が繰り返し作られ皆に受けてきたのは、日本人の心の中に「もう戦争による破壊と殺戮はごめんだ」「やられるのが嫌なだけ…
1991年にカッパ・ノベルズから刊行されたドタバタ・ピカレスク・コメディー、1997年発行の光文社文庫版で読む。 私がこの作家に注目したのは、「夏の災厄」(1995年、毎日新聞社刊)からだった。日本版マイクル・クライトン「アンドロメダ病原体」とも言うべ…
30年ぐらい前だろうか、街の本屋さんへ行くと、ごま書房や徳間書店などから出版された金儲け指南の本が平積みになっていた。当時はそれらの著者である「邱永漢」という名前を見ても「金儲けの上手な中国人」程度の認識しか持たず、この人の文学的センス、人…
(講談社文庫版はもう古本でしか入手できないらしいが、今は小学館から出ているようだ) 昭和真っ盛り(と言っても昭和は長かったから人によって思い浮かべる年代は違うがここでは昭和30年代)の青春物語。何しろ主人公の名は「重吉(ジュウキチとしか読めな…
ジョン・アップダイク「同じ一つのドア」(新潮文庫)読後メモ