篠田節子「ブルー・ハネムーン」(光文社文庫)読後メモ

 1991年にカッパ・ノベルズから刊行されたドタバタ・ピカレスク・コメディー、1997年発行の光文社文庫版で読む。

 私がこの作家に注目したのは、「夏の災厄」(1995年、毎日新聞社刊)からだった。日本版マイクル・クライトンアンドロメダ病原体」とも言うべき、今から思えば新型コロナ禍を地方自治体行政の視点からシミュレーションしたような見事にシリアスなフィクションだった。

 それに比べてこの「ブルー・ハネムーン」の羽目の外しぶりは、また別の面白さがある。映像化はされていないようだが、手練れの脚本家がいれば今でも十分テレビドラマや映画になるのではないか。時代設定は、レトロ感を出して原作のまま1990年代としてもいいし、現代に置き換えてもいい。現代に置き換える場合、公衆電話をスマホに、フロッピーディスクUSBメモリーに、ファックスはメールにするのかな。