ロス・トーマス「冷戦交換ゲーム」(ハヤカワ・ミステリ)読後メモ

 米・ソの冷戦、そこに中国も台頭してくるころの東・西ドイツが小説の舞台。著者はアメリカ人、主人公もアメリカ人。

 人が死ぬ場面に、ル・カレの小説のようなモラリティがあまり感じられない。ハードボイルド系スパイ小説。

 登場人物の二人が話す場面で、

「あの壁はなくならない、ということだな。少なくともおれたちの生きている間にはね」とある。一人は小説の中で死に、もう一人は生き残った。「壁」とは、今はなきベルリンの壁のこと。

 原題:The Cold War Swap

 著者:Ross Thomas

 訳者:丸本聰明