磁気テープ健在を喜ぶ

 2024年5月8日付けの朝日新聞(紙媒体)に「デジタル社会の『命綱』 磁気テープ進化中」と題する記事が載った。デジタル版は2024年5月8日 5時00分: 朝日新聞デジタル(有料記事)だが、内容は2024年4月17日 8時00分: 朝日新聞デジタル(有料記事)の焼き直しのようだ。それはともかく、目立たないながら頑張って働いているデバイスに光を当てた記事が一般紙に載ることは大変喜ばしいことだ。 

 思い立って、磁気テープに関わる最近の資料を少し掘り起こした。

 

 

 

 

 

お役所の人は皆、外部との公用デジタルチャネルを持っているのだろうか?

 ここ1、2か月、都内某税務署の担当者様とやりとりしている。やりとりの手段は電話、FAX、郵便だ。

 電子メールという選択はない。その税務署には担当者が公用で外部と電子メールのやりとりをするためのシステムインフラがないのだ。もちろん、その税務署に限らず、日本全国、多くの税務署がそのような状況だと想像される。

 どこかのITベンダーが今頃、全国の税務署に電子メールを導入するプロジェクトの提案書を作っているのならよいが、デジタル庁の誰かさんのエクセル表の300行目あたりに書かれているだけだとちょっと困る。

 

「DXとデジタル化の違い」説明できなくてもいい

 日経電子版(日経クロステック)の2021年9月21日記事に「DXとデジタル化の違い 『説明できない』管理職が7割」とある。説明できないことがそんなに問題だろうか。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)は、「IT(情報技術)を利⽤して製品やサービス、ビジネスモデルやビジネスプロセス、さらには組織や業界構造を刷新する取り組み」を指し、デジタル化は、「既存の仕組みや設備をデジタルに置き換えること」で「主に業務の効率化を目的とする」と言うが、紙をデジタルにするだけでも事務フローは大きく変わるのが普通だ。電子メールが初めて導入されたとき、すべてのメールを部下にせっせと印刷させていた上司がいたが、そんなことは長続きしない。他社のまねをして電子メールを導入しただけでも、社員の意識は変わり、仕事のやり方は変わる。ハンコのデジタル化にしても、電子化そのものを究極の目的としてやるわけがない。人は皆、そのアイデア・新技術を仕事にどう活かすか、UX、CX、EXをどう変えるか、すなわちビジネスの刷新につなげるべく、頭を働かすものだ。

 名前や定義にとらわれずに、まずは検討してみる、やってみることだと思う。

 

週刊BCNにシステムエンジニア不正出金の記事

こういう話を聞くと、悲しくなる。システム受託業界全体の信頼に関わる。バックアップファイルを不正に転送したということだが、そのファイルからどうやって顧客のパスワードを解読したのか。パスワードは暗号化されていなかったのか。

現在の AI 技術には限界

 東商新聞2019年11月15日号に、東京商工会議所の情報通信部会が10月11日に開催した講演会「デジタル革命と中小企業の活路」の記事が載っている。

 講師の野村総研理事 桑津浩太郎氏の以下の言葉をメモしておきたい。 

「現在の AI 技術には限界がある。

「 自動化できる部分は機械に任せ、複雑な判断を伴う仕事や AI には置き換えられない業務など、本当に人手が必要な『ラストワンタッチ』に、限られた人員を配置すべき」

  つまり、人と AI の協働ということであり、AI 任せにはしないということだ。「シンギュラリティ」は来ない。この気づきは、今後 AI やコミュニケーションロボットの実用化へとつながっていくと思う。

eKYC

 eKYC (electronic Know Your Customer) とは、電子的に本人確認を行うことだ。例えば、銀行に口座を開くとき、銀行に行かないでスマホを使ってネットだけでできたら便利だろう。

 これが日本では去年の11月まで許されていなかった。顧客が自分の顔写真と免許証などの写真を銀行のホームページでアップロードすることはできても、銀行が郵送する転送不要郵便を顧客が受け取るまでは KYC (本人確認作業)は完了しなかった。

 2018年11月30日、犯罪収益移転防止法施行規則が改正され、郵便物を送付することなく電子情報のみにより本人確認を行う方法が認められるようになった。その電子情報の態様等々は、犯罪収益移転防止法施行規則にかなり具体的に書かれている。*1

 eKYC をシステムに組み込む際に法規定を遵守することは当然だが、それにとどまらず、よりハイレベルで繊細なセキュリティ仕様を入れる必要がある。他人の写真や免許証を手元に置いて、なりすましをするようなデジタル詐欺を防がなければならないからだ。

*1:金融庁の2018年11月30日付け報道発表資料参照。

https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20181130/20181130.html

コンプライアンス、トラディショナルな金融機関の生きる道

Google と Citigroup が提携、Google Pay のアプリから Citibank の預金口座にアクセスできるようにする計画があるという。

 その記事の中で、Bryce VanDiver という IT コンサルタント

Compliance is still being manged by Citi. If you look at banks’ core competencies, compliance being one of those, they’re really good at that.”

と言っていることが紹介されている。

 同感だ。コンプライアンスこそ、トラディショナルな金融機関の生きる道だと思う。